村田ピアノ音楽院

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序文

この講座はわたしがHP上で作成してきた今までの講座において重力奏法(重量奏法)と並んで最も重要であり、かつ現代のピアノ教育において最も危機的状況として認識すべき内容です。

なぜなら、日本の教育水準の高いピアノ指導界においてもなぜか音楽的に弾く=ピアノを歌わせる、ということがあまり重要視して指導していないのではないかと思われる事が多々あります。

なぜそのようなことが起きるのか?

ここにその内容を簡潔に述べたいと思います。

 

1.日本人にはなぜかあまり感動しない演奏が多い?

ちまたでは数多くのピアニストがいて、数多くの演奏が聴けますが、そういう中で意外とあまり感動できない演奏に遭遇したことはないでしょうか?

海外からの来日演奏家の演奏においてはどんな人でもそれなりに「良い演奏だったな」と思わせる事はあっても、日本人の演奏に関しては漠然と「なんかいまいちだったなあ」と思わせることに遭遇した事はないでしょうか?

具体的には叙情性や、フレーズの歌わせ方、和声感が足りない様に聞こえるのです。

まるでひょっとしてピアニストは何も考えずに あえて単調にピアノを弾いているのではないか?と疑いたくなる事もあります。

この理由を単に「日本人は西洋人ではないので西洋音楽が良く理解できないからだろう」と判断するのは実は間違いであり、本来はそういう理由ではなく、教えられるべき演奏音楽を実はどの日本人も、あえて教えられてこなかった、ということなのではないかと私自身は思うのです。

実際、日本人のプロの演奏者の中にはあまり多くありませんが、大変音楽的な演奏をする人もいる事は事実です。

ではなぜそのようなことがおきるのでしょうか?

ここに一つの大きな以下の理由があります。

 

2.コンクールでは音楽よりもテクニックが大きいウエイトで重要視されている。

つまり、音楽性がないがテクニックが完璧な人と、音楽性は抜群であるがテクニックがない演奏の場合、これはテクニックがある人の方が予選を通過、もしくは本選に残ります。

それはそれで仕方ない事ではあるのですが、ややもするとその傾向があまりに強いために、普段のピアノ指導においてテクニック重視になり、音楽性はどうでも良いという風潮になりがちです。

もっとわかりやすく言うと、いくら上質の音楽性を身につけた所で、それはコンクールでは評価されにくい、無用の長物という面があります。

これはしかし,日本だけではなく、残念ながら国際的なコンクールの流れにおいてもその風潮はあるようですが、特に日本の場合はその指向がかなり強いと言えます。

そのような理由からでしょうか?すべての人たちが別に音大やコンクールを目指しているわけでもないのに、なぜかそのようなテクニック重視で音楽の事をあまり指導しない風潮が蔓延している様な気がします。

海外のピアノ指導においても、テクニックはもちろん重要視されていますが、それと同水準に音楽性も厳しく求められてはいます。

 

 

3.音大の先生は音楽に関してはあまり指導しない

これもまたかなりショッキングではあるのですが実は良く聞かれる話です。

なぜこのような風潮があるのか私自身もよく分かりません。

どちらかというと音大のレッスンでは叙情性や歌う事よりも、構成面、そしてしっかりとしたミスのないテクニック、ハッキリしたガッチリな弾き方、明確な音・・・そのような事をまず先に求められます。

つまり曲の完成度を求めるがあまりに、完璧性、構成力、明瞭性を優先され、どちらかというと叙情性、もしくはフレーズを歌わせるという音楽面はあまり重要視されず、後回しになっているようです。

しかし海外の音大ではこの逆で、常に音楽においては大変、精神的に次元の高いものが求められます。

おそらく、曲を仕上げるという意味で日本ではとにかく形にする、コンクールで良い成績を取り易い弾き方にする、という考えのみがはびこっているのかもしれません。

 

5.日本人の演奏には音色が単調な事が多い。

音大であまり音楽を指導しない、 ピアノを歌わせる事をしない 、という結果、ピアノの演奏は音色的に単一なものになりやすいことになります。

これが日本で大規模に行われているだろうと思われる証拠に,日本人ピアニストは圧倒的に音色が乏しい事が多い。

勿論,海外のピアニストにもそういう人はいるのですが・・・。

有名な調律師、フランツ・モアの話しにこんな逸話があります。「もっともデリケートな音から雷が落ちる様な音まで・・・ホロビッツには出来たが日本で私が聞いたピアニストにそのような演奏はなかった」(ピアノの巨匠達と共に)から引用

 

 

3.戦前のピアニストを日本では異端視する傾向がある。

戦前の巨匠ピアニストの録音(主にSP録音再生CD)などは現代のピアニストとはかけ離れた音楽性を持っています。

ラフマニノフ,(戦前の)ルービンシュタイン、ホロビッツ、コルトー、モイセイヴィッチ、フリードマン・・・これら往年のピアニストは現代のピアニストにはない音楽性が聞けますが、残念ながらあまりの強烈な個性ゆえ現代のピアノ教育界では異端視扱いされ、参考に聞いてはいけないとされています。

確かに楽譜を守っていない、自己勝手な演奏をしている事もあるのですが、しかし現代の日本人ピアニストにもっとも欠けている”音楽性”・・・もっと詳細にいえば、ピアノを歌わせる技をこれら往年のピアニストは持っています。

彼らのピアノは現代のどのピアニストでも表現できない音楽性を持っていますが、日本のピアノ教育界で彼らを異端視する動きは単純に音楽性を軽んじていることになります。

しかし,この時代のラフマニノフやプロコフィエフたちは実際に活躍していた、いわば”生身”の一時代の作曲家の演奏です。

また,ショパンやリストの孫弟子に当たるピアニストも多く,これらピアニストがショパンやリストの教えからさほどずれた指導内容ともいえないと思います。

一時代の作曲家が実際に生きていた時の音楽性というものを参考にせずに、はたしてクラシック音楽の根幹である”復元”ということができるのか?という疑問が出てきます。

ここには近年のコンクールや受験の為の演奏という面で,クラシック音楽がよりアカデミックな傾向が強くなり過ぎ、ラフマニノフ自身の自作自演でさえ、「あれは良くない演奏」という評価が下されつつあります。

ここに、コンクールや、アカデミー機関がクラシック音楽を終焉させたと行っても過言ではない事実がここにはあるのではないかと思えてくるのです。

 

4.どのようにピアノを歌わせれば良いのか?

 

ピアノを歌わせるという事はややもするとまるで生まれ持った才能のみでやっていると勘違いされ易いのですが、そうではなく確固としたセオリーがあります。

しかし残念ながら歌わせ方をおそらく音大では教えてはくれません(もしくはタブーとされている)

ここで書かれている内容が多少なりともピアノを歌わせたいと思っている人になにがしかの参考になればと思います。

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